結衆の名誉住職様が遷化され、葬儀の導師を務めることとなりました。
真言宗でお葬式の際、亡くなった方に対してお導師さんが行う作法を「引導作法」と言いますが、これは亡くなった方に仏教の戒律ならびに戒名を授け、自分の弟子という形で仏さまの弟子にして悟りを開かせ、成仏に導くという作法です。
ですから、すでに出家得度している僧侶に向けての葬儀では、本来、引導作法は必要ないと言われています。
すでに仏弟子となり僧名をもらっている僧侶には、新たに戒名も必要なく戒を授かる必要もありませんので。
特に自分より僧侶歴(法臈)の長い僧侶に対する葬儀では、自分の弟子にするという考え方は当てはまりません。
今回も、遷化されたのは自分の親のようなお歳の大先輩の僧侶であり、私などより遙かにたくさんの檀徒さんの旅立ちを導いて来られた方なので、その方を自分の弟子にして導くなどということは全くありえないことです。
この様な場合の拝み方には一般的に二通りの方法があります。
一つは、引導作法を用いずに、在家の方に対する葬儀とは違うスタイルの法要を行うという方法です。
導師の作法によって成仏に導くのではなく、より徳を高めてもらう(増進仏位を願う)という気持ちで拝みます。
もう一つは、それでも引導作法を行う場合です。
但しその場合は、大先輩の僧侶に対して「自分の弟子になって成仏してもらう」という気持ちで臨むのではなく、「自分が学び、用いてきた作法を先師に見て頂く」という気持ちで臨むのが良いといわれています。
いずれにしても、これまで学ばせてもらった感謝の気持ちを込めて、自分の持てるものをしっかりと出していきたいと思います。