修士時代は文献学の手法を大切にしていたので、言葉が変化する瞬間や生まれる瞬間には興味があります。
最近、言葉が変化する瞬間を感じたのは「闇営業」という言葉です。
元々の業界用語としての闇営業は、最初は「事務所を通さずに仕事をとること全般」だったように思うのですが、
反社会勢力相手の闇営業が話題になり、マスコミが「反社」=「闇」のイメージで報道を展開したため、
「闇営業は反社会勢力相手の営業」としての認知が広まってしまいました。
そして、本来の意味でそれを使っていた業界は、世間が異なった形で認知してしまったものを本来の使い方に訂正することを諦めている節があり、もう一つ同じ意味の「直営業」の方を使うことで受け入れています。
古くは「ホームページ」も、言葉の変化の良い見本です。
「ホームページ」という言葉は本来はウェブサイトのトップページ(玄関口)という意味で、ページ全体を指す言葉ではありませんでした。
ですから、「ホームページはこちらです。」という言葉の本来の意味は「ウェブサイトのトップページ(のアドレス)はこちらです。」だったのですが、日本では「ホームページ=サイト全体」と勘違いされたため、気がつけばその間違いの状態で定着してしまった。
という歴史があります。
これは知識としては知っていても、それにこだわっている人は現在ほとんど見受けられません。
次に、言葉の誕生というか、定義が決まっていくタイミングに関してですが、今感じるのは「オンライン参拝」という言葉です。
正月を控え、現在、様々なメディアや情報サイトから「コロナウィルスに対応する初詣のあり方」のお問い合わせがあります。
その中で、「オンライン参拝(初詣)は行っていますか?」というご質問をよく頂くのですが、尋ねてこられる相手ごとにオンライン参拝のとらえ方が違います。
「うちも色々やっているのですが、何を以てオンライン参拝をしているといって良いのでしょうか?」と尋ねてみると
・初詣の境内の様子や、御祈願の様子を(一方通行で)ライブで流す
・zoom等で回線を繋ぎリモート祈願を行う
・参拝者目線でお参りをしている動画(録画)をネットで流してバーチャル参拝体験
・Googleストリートビューを設置している
など、一方通行、双方、ライブ、録画など、各社様から色々な解釈を頂きました。
中には、「再度上司に尋ねてみます」と言って一旦電話を切られた情報サイトの担当の方もいらっしゃいましたが、このように、この言葉はまだ、誕生はしても定義づけができていない言葉なのだと感じます。
今後、時間の経過や、発信力、影響力の高い方の解釈に統一される形で意味合いが定着していくのだと思います。
そうこうしているうちに、「幸先詣(さいさきもうで)は行っていますか?」というお問い合わせが入りました(笑)
「幸先詣」は生き残って定着する言葉となるのかどうか、興味深く見守りたいと思います。