最近、檀家さんから生前戒名の依頼が続いています。
自分の代で途絶えてしまうのでしっかりと準備をしておきたいという方など、色々な考えをお持ちの方が増えているようです。
私には、生前戒名の話題になると必ず思い出す出来事があります。
今から20年以上前の話です。
(現在は関係者は誰もいらっしゃらないのですが、個人情報に配慮しつつご紹介致します。)
百才を越える年で亡くなられた檀家さんの女性がいらっしゃいました。
身寄りが無く老人ホームで息を引き取られ、遺言により代理人から葬儀の依頼があり私が葬儀に出かけました。
院号をご希望と伺っていたので、あらかじめ戒名を考えて葬儀に向かったのですが、代理人の方が「すでに戒名はあります」と仰るのです。
不思議に思って事情を尋ねると、古い奉書紙の書き物を差し出されました。
そこには、「逆修(生前戒名を授与したという意味)」の文字と戒名、そして当山の先々々代の住職の名前と花押(今のサインのようなもの)が書かれてありました。
先々々代の住職がこの女性に生前戒名を授けた証です。
先々々代が亡くなられたのはその当時から70年も前。
亡くなられた女性が百才ですから、戒名を授かったのはどんなに遅くても30代前半です。
普通、生前戒名はある程度その方の生き方や人となりが分かる年齢となってから付けられることが多いのですが、ご本人の事情により、当時の住職(先々々代)にお願いして若くして付けてもらったのだと生前話しておられたそうです。
それならば私の考えてきた戒名はもう必要ないと考え、先々々代の戒名を使わせて頂くことにしたのですが、逆修証をよく見てみると…
なんと、先々々代が付けた戒名の院号(○○院の部分)と、私が準備していった戒名の院号が同じでした。
体が震えたのを覚えています。
偶然なのか、それとも亡くなった女性がこの院号の戒名となるべき方だったのか…。
僧侶として25年以上戒名を授け引導作法を行い続けていますが、今でも忘れられない出来事です。