子年の本尊、千手観音様のお話

令和二年は子年です。
子年の本尊様は千手観音様という、観音様の中のお一方です。

一口に観音様といっても、千手観音様以外に、聖観音様、十一面観音様、如意輪観音様をはじめ、様々な観音様がいらっしゃいます。
それぞれ、お顔の数、手の数、持ち物等、特徴がありますが、ほとんどの観音様に共通しているのは、宝冠に阿弥陀様のお姿(化仏)があることです。
これによって、観音様という菩薩の「本地(本来のお姿)」の如来が阿弥陀如来様であるということが表されています。

以前、寺報「菩提心」の「仏さまとマンダラのお話」でも書かせて頂きましたが、如来様は、悟りの境地にいらっしゃって自らの悟りを味わっておられる仏さまです。ですから、衆生の世界に出向くことはないので、特徴あるお姿や持ち物でご自身を表現することはありません。
これに対し、私たちの世界に赴いて実際に衆生済度の活動をされる菩薩様は、ご自身の知恵や慈悲の徳がどのようなものか衆生に伝わるように、特徴あるお姿や持ち物で私たちの前に現れます。

その中でも、千手観音様は最も特徴あるお姿の仏さまではないかと思います。
千手観音様の一番長い名前は「十一面千手千眼観世音菩薩」です。
「お顔が十一面あるのが十一面観音様、手が千本あるのが千手観音様」と思われている方がいらっしゃいますが、千手観音様もお顔は十一面です。
それだけではなく、たくさんの手には、聖観音様の持つ蓮華、如意輪観音様の持つ法輪なども持たれており、他のほとんどの観音様の特徴も兼ね備えています。
千手観音様を「蓮華王(観音の王)」という呼び方をすることがありますが、このような理由からでしょうか。
千手観音様の種字(シンボルとなる梵字)は、本地となる阿弥陀如来様と同じ「キリク」です。

それ以外にも、たくさんの手には観音様以外の様々な仏さまが持つ物まで持っておられる千手観音様は、これ以上はないくらいの「全部乗せ」にお姿を変え、私たちを救おうとしてくださっている仏様なのだと感じます。

来年は令和初の新年を迎える年、子年という干支の始まりの年、また閏年という四国巡礼に特に御利益のある年など、様々な節目の年となっています。
千手観音様のご加護により、令和二年が皆様にとって良き年となりますようお祈りしています。