第18号特集 .お墓と仏壇の話(H21.12.5)
○はじめに
お寺で檀家さんからの質問で最も多いのが、お墓やお仏壇についての質問です。
「お墓を移転するにはどうしたらいいのか?」
「お仏壇やお位牌を新しくしたいのだけど、どうしたらいいのか?」
という一般的な質問に始まり、中には
「本当は、お墓とお仏壇のどっちにご先祖様はいるの?」とか、
「分骨をするとほとけさんがバラバラにってしまうのでは?」
などという質問まであります。そしてさらには
「私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません。眠ってなんかいません 」
などという歌も流行(はや)っているので、それについての質問もいただく今日この頃。
今回は、そもそもお墓とは何なのか、お仏壇やお位牌とは何なのかについて、お話しさせていただきたいと思います。
○お墓とは、お仏壇とは
以前、菩提心十五号「よく生きること、よく死ぬこと」でも書かせていただきましたが、私たち真言密教の教えでは、人は亡くなると、生み出された元の世界に戻っていくと考えられています。
土に還(かえ)り、自然に戻り、宇宙そのもの(ほとけ)となるという考え方です。
ですから、お墓の下や、お仏壇の中のお位牌に、それぞれ霊魂が宿っているわけではありません。
それでは、お墓やお仏壇は何のためにあるのでしょうか?
私は、
「お墓やお位牌は、向こう側の仏さまの世界にいるご先祖様に気持ちを伝える窓口であり、面会場所なのですよ。」
とお答えしています。
生前の身体であった遺骨を納めたお墓、
ご先祖様のために特別の飾り付けをされた仏壇の中のお位牌。
そういった特別な場所に、僧侶が「開眼作法(かいげんさほう)」という特別な作法をおこなって、ご先祖様と心を通わせる場所にしているのです。
そこに行けば、会いたいときにいつでも来てくれる場所となっているのです。
ですから、お墓とお位牌のどちらにもご先祖様がいらっしゃるし、お骨を分けてもご先祖様がバラバラになるわけではないのです。
○安らげる場所
「千の風になって」の中では、風や光、星や雪などはきれいで明るい物であるのに対し、お墓は暗く冷たい場所として扱われています。
しかし、私はそれだけではないと思います。
お墓やお仏壇は、亡くなってすぐの時は、ただ悲しみをぶつけるだけの場所かもしれません。
しかし、時間がたつにつれ、
自分や子供の成長をみてもらう場所、
嬉しかったことを報告に行く場所、
重大な決心を伝えに行く場所など、
会いたいときに会いにいける場所となっていくのではないでしょうか。
亡くなったおじいさんのお仏壇に同じお菓子をお祀りして、お茶を飲みながらおじいさんとお話をしているおばあさんがいますが、そのおばあさんにとって、お仏壇の前はお気に入りの場所に違いありません。
お墓やお仏壇は、亡くなった方、生きている方の両方が安らげる場所であり続けていくことを願っています。
(以上)
当サイトの内容は、ご自由にリンク、引用して頂いて結構ですが、著作権を放棄するものではありません。
箸蔵寺による著作物の引用や転載の際は引用・転載元を明記していただきますよう、お願い申し上げます。
ありがとうございました。
忘れていたお話を、再確認させていただきました。これからもよろしくお願いします。